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こころの健康シリーズVI 格差社会とメンタルヘルス

10 介護職員のためのメンタルヘルス

NPO法人わかば代表
辻本きく夫

 

原点を忘れない

 介護の仕事を始める動機はそれぞれですが、調査では「やりたい職種・仕事内容である」、「能力や資格が活かせる」、「正規職員として働ける(可能性がある)」などが上位に上がっています。介護の仕事は誰にでもできる簡単な仕事ではありません。他人を気遣う、人としての「優しさ」や「思いやり」が必要な仕事です。困難に立ち至ったときは介護の仕事を選択した時のことを思い返してほしいと思います。初心を思い出すことで勇気が湧いてくるはずです。

おわりに

 介護業界には多くの問題があります。中でも人材不足は、いまでは人材枯渇というべき状況になっています。団塊の世代が75歳に達する2025年の、いわゆる25年問題に対処するために人材養成が必要といわれていますが、とくに在宅介護の現場では介護職の高齢化が問題になっており、このままでは介護人材は大幅に減る危険さえあります。国家財政が厳しい中で社会保障費削減を唱える人が多いのは事実ですが、人材確保のためには介護報酬を上げる以外に方策はないと私は考えています。介護の仕事は天職とするのに不足のない仕事だと思います。だから現在の介護現場を支えている人たちには、それぞれの専門性を高め、継続的に働いてもらいたい。いまの職場で続けるのが難しい場合でも、介護の現場に残ってほしいと思います。介護職として生きいきと働くには、いまの介護職が置かれている社会的状況を知り、自らを育てる明確な計画をもち、孤立しない方法を学ぶことが必要です。拙著が仕事継続のヒントになれば幸いです。また、これから介護職になろうと考えている人たちへ若干でも勇気を与えられれば望外の喜びです。

参考文献
1)第1回社会保障審議会福祉部会 福祉人材確保専門委員会資料 平成26年10月27日
2)「労働者のメンタルヘルス不調の第一次予防の浸透手法に関する調査」厚生労働省厚生労働科学研究費補助事業 労働安全衛生総合研究事業 平成22年度総括・分担研究報告書
3)東京ハローワーク統計資料

 

1.はじめに/介護職という仕事
2.たかが介護されど介護〜専門性を自覚する〜
3.前向きに仕事をするための心得/自己再生力を信じる〜疲れたときは徹底して休む〜
4.人生哲学をもつ〜仕事を含めて自分流の生き方を考える〜/仲間をつくる〜人から学ぶことは多い〜
5.原点を忘れない/おわりに

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