NPO法人 自立支援センターふるさとの会 社会的ネットワークの状況と生活支援ニーズ職員記入シートの家族状況の結果をみると、同居家族がいる利用者は1.3%のみで、ほとんどの利用者が単身世帯であった。さらに家族とのつながりをみると、「家族とのつな がりが全くない」と「危篤状態など特別な状況のみ連絡のとれる家族がいる」を合わせて69.1%となった。利用者記入シートでは、家族・親族との連絡が「ない」と回答した割合が69.7%であり、職員記入の結果とほぼ一致した。このように約7割の利用者は家族や親族とのつながりのない状態であった。一方、普段話をしたり、ちょっとした相談をする人が「いる」と回答した割合は76.0%であり、相談相手は、「支援団体(ふるさとの会等)職員」58.7%、「友人や知人」48.3%が多かった。また、相談者も家族との連絡もない孤立状態にあると回答した利用者は5.8%、相談者がふるさとの会職員のみと回答した利用者は11.5%であった。 生活支援の実施状況(最近1ヶ月間)の結果をみると、「安心生活の保持(寂しいときや困ったときに相談にのる、利用者の味方になって対応する、定期的に訪問して安否確認をするなど)」が63.6%と最も高い割合であった。その他の理由では、割合の多い順に「社会サービス・コーディネート(診療所や看護師、地域包括、行政など関係機関と連絡調整をするなど)」35.8%、「居住環境の保持」34.6%、「健康の保持」29.7%などと続いた。これらは、何か困った時に一緒に考えたり、寂しい時に気持ちが落ち着くまで付き合ったりするような安心した人間関係を基盤とした支援であって、居所別(自宅(アパートなど)、自立援助ホーム等、就労支援ホーム等)で比較した場合においても、共通して実施されている支援となっていた。 以上のことから、家族とのつながりのない単身の生活困窮者・生活保護受給者の生活支援においては、日常的に相談できるような人間関係を基盤とした「安心生活のための支援」が求められていると考えられる。また、相談者がいないと感じている利用者や相談相手がふるさとの会職員のみである利用者も利用期間の長短に関わらず少なくないことや自宅(アパートなど)で暮らしている利用者の約2割が孤独死の心配があると回答していることから、今後の互助づくり(仲間づくり)の取り組みの中で、友人や近隣とのつながりが広がるような工夫をすることが求められる。 事例1 アパートにおける互助の支援 木造アパートで暮らす50代の男性は、隣人の生活音に悩まされ、外付けの電気ケーブルを切断するという実力行使に踏み切った。大家は退去勧告も考えたが、事件を知った職員が男性宅を訪れ、一緒に騒音元の隣人をたずねたところ、明らかに認知症の女性でゴミ屋敷化した部屋で暮らしていた。気の毒に思った男性は、それ以来女性の部屋へお茶を持って行き、話し相手になっている。散らかしたごみを一緒に片付けることもある。それを繰り返すうちにドアの開け閉めの音にも気を遣ってくれるようになり、外出時には声を掛けてくれるようになった。女性はさびしく話し相手が欲しいようで、男性が味噌汁を持って行ってあげると、泣いて喜んでくれるという。 1.はじめに/調査の概要調査の概要 |
|||||||