長野県佐久総合病院心療内科 施設職員・心理士の働きと病院医師・心理士の働き施設の職員は被虐待の日々から逃れてきた子どもたちを施設のなかで温かく迎えて癒そうと大変な努力を続けて来た。しかしその受けた虐待の内容・時間などが複雑に絡み合った子どもたちの「こころ」の傷は施設職員たちでも理解不能の闇なのではないか、だからこそこちらに相談に見えたとすれば、病院の面接室ではまた別の光で見なければならないだろうし、別の癒しの道を見つけなければならない。しかしすぐ解決の道が見えるものでもない。むしろ病院の臨床心理士は子どもたちとも職員の方々とも程よい距離をたもちつつ、面接を続けてくれた。長期間、時には8年の長きに亙って面接が続いた例もある。そのサラリとした対応が却って子ども達にはさっぱりしたあと味を残して面接に来たくなる気持ちにさせているようにも見えた。 またあるいは田中康雄氏の言われるように送迎をしてくださる職員の方々との行きかえりのおしゃべりやちょっとした買い食いが「癒し」になっているのかもしれない(4)。B子やC子はほとんど同じひとが送迎をされていた。その方のお人柄もあるかもしれないが、子どもたちもひどく楽しみにしていたようである。病院への通院はダシでしかなかったのかもしれない。そうした小さな「特別」がそれそれぞれの子どもにあって、それがその子の癒しや成長に必要だったのかもしれない。 いろいろな事情で「育てにくく」育てられてきた子ども達である。「治療」を通しても問題の原因とからくりを知るまでには至らなかった。まだ私たちは五里霧中なのである。その霧を晴らすために施設と病院は互いに努力を続けねばならない。 参考文献
1.はじめに |
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