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こころの健康シリーズVI 格差社会とメンタルヘルス

9 長期療養が必要な家庭のメンタルヘルス
〜精神障がい者家族の体験から見えること〜

さいたま市精神障がい者もくせい家族会
岡田久実子

 

理解が難しい精神疾患・精神障がいと向き合う日々

 多くの病気は、医療につながり、その原因や診断がつくことで、治療内容や回復の見通しがたち、病気への対応方法も理解が進むようになりますが、精神疾患では、医療につながり入院治療、あるいは外来治療を始めても、病状や対応などの理解が進まずに、わけがわからないまま本人をケアし続けるという経過を辿ります。

 精神疾患の症状として本人の脳の中で起きていることが、他の者からはとても理解しづらく、生活を共にする家族にとっては、「毎日がジェットコースターに乗っているようだ」と表現した家族がいるように、特に急性期前後は「いつ、何が起こるか予測不能」の日々です。また時間が経過しても、一部は病気の症状として残る場合がありますので、突然に予想外の出来事が起こり、そこから派生する将来への大きな不安感が、そばで見守る家族に大きな精神的影響をもたらします。

 我が家でもいろいろな出来事がありました。突然、職場に「お母さん、助けて!!道に迷って家に帰れない。」と長女から悲痛な声で電話が入る…またある時は、買い物途中で、何気ない私の言葉に烈火のごとく怒り出し、自宅に駆け戻って鍵をかけてしまい、家から閉め出されたこともありました。病状の治まらない長女が「私…この犬を殺してしまうかもしれない…」と愛犬に暗いまなざしを落としてつぶやかれた時には、私の方がどうにかなってしまいそうでした。家族会の中には、帰宅時に玄関付近で本人と出会うと「嫌がらせをしているのか!!」と暴力を振るわれる、不調になると窓を開けて近所中に響くような大声を出して騒がれる、あるいは自殺企図の場面に出合ったなど、毎日の生活の中で様々な出来事を経験しています。このような経験が積み重なると、少しの物音で体中に電気が走ったかのような感覚を覚える、常に張り詰めたような緊張感から解放されずに、寝つきが悪くなる、少しの物音で目が覚めて眠れなくなる、喜怒哀楽の感情が起きなくなる、食事がのどを通らない、体重が減少するなどの心身共に健康面への影響が現れてきます。家族がこれまでに不眠・うつ・不安など精神的不調で医療機関を受診した人は33.9%になるという調査結果があります2)。私の身近な家族会会員にも、睡眠薬を常用している方は多く見受けられますし、うつ病を発症した方も少なくありません。

 このような実情の中で、これまであまり語られることのなかった課題として、「家族への暴力」という課題があります。

3.「家族が受ける暴力の研究」に関わって

1.はじめに/精神疾患・精神障がいとの出合い
2.理解が難しい精神疾患・精神障がいと向き合う日々
3.「家族が受ける暴力の研究」に関わって
4.家族支援の必要性/おわりに

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