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こころの健康シリーズZ 21世紀のメンタルへルス

No.6 SNS使用に伴うコミュニケーション問題

独立行政法人国立病院機構久里浜医療センター インターネット依存治療研究部(TIAR)
橋本琢麿 前園真毅 三原聡子 中山秀紀 北湯口孝 越野仁美 樋口進


4.SNS使用による問題とコミュニケーション問題

(1)リアル充実の仮面
 SNSに投稿する内容が全て事実とは限らない。他者の羨望やFBの「イイね!」を求め、自分の生活を良く見せようと投稿は明るい話題や、どこに行った、何を食べたなどの自慢話が中心になる。自分にとって伝えたい話題のみを選んで、自分に都合の良いリアルで充実した自分を偽装できる。一方、葬儀に行ったことを写真付きで載せてしまい家族とトラブルになることもある。個人により現実と違う性別を演じていることもある。

(2)危機意識が薄い
 SNSは設定により公開範囲を制限できるが、一度インターネットに情報を載せるとあっという間に拡散してしまう。少女が自分の性的な写真や動画を晒す、家出少女が神待ち掲示板(泊めてくれる他人を募集する掲示板)など児童売春の温床になっている側面もある。そもそもネットに発信するということは全世界に向けて情報をオープンにする訳なのだが、あくまで内輪ネタ(クラスメイトしか見ない)という前提で、掲示板やSNSに写真やプロフィールを公開している若者もいる。またFBに記事や写真を投稿する場合、“位置情報”という個人情報も付加されるので、自分がいつどこに誰といたかが全世界の第3者に一目瞭然になる。氏名、年齢、顔写真、職業、住所、位置情報など自分を特定する情報がSNSには溢れており、公開制限などの対策をしなければ個人情報が垂れ流しになる。その危険に気がついていない使用者も多い。

(3)いじめの方法が変化
 青少年のコミュニケーション法が変化した事で、いじめの方法も変化している。筆者が就学期の1980〜90年代は、上履きに画鋲を入れる、物を隠す、スボンを下ろす、クラスで仲間外れにされるなどという方法であった。しかし問題はより陰湿になっている。例えばトイレに閉じ込めたり下着を外すところを撮影し、写真や動画をSNSを通じて拡散する。また、SNSや掲示板に、いじめの対象となる女児の書き込みをのせ、援助交際を求めているように偽装する。そして、見ず知らずの男性からメールや電話で連絡が来る。このように、スマホやネットとSNSの普及により、クラスの中だけでなく全く関係のない第3者にまで知られたくない情報や影響が拡散する。

(4)消えない傷跡デジタルタトゥー
 一度ネットに拡散した情報は簡単には消えない。プロバイダやサーバーに残っている情報を削除しても、誰かがその写真を自分のスマホやPCに保存していれば、ネットを経由して削除したはずの情報が簡単に再度拡散する。

(5)ふざけたつもりが犯罪に
 コンビニのアイスのケースに人間が入りその写真をSNSに投稿する。未成年が危険運転をする行為をインスタに投稿するなど2017年現在でも枚挙に遑がない。社会的に見れば威力業務妨害や道路交通法違反に相当する。

(6)コミュニケーション問題
 現実の会話では人は相手の声色、表情や仕草といったノンバーバルコミュケーションも意識して相手と会話する。しかしSNSでは大部分は文字や絵文字などであり、相手と対面しないため表情や仕草、場の空気感といったものが伝わりにくい。そのためちょっとした誤解から炎上と呼ばれる、非難の応酬などトラブルが生じやすい。また若者が新しいコミュニケーション方法を獲得したのだが、彼らが主に自分より年上の世代と関わる時、(例えば面接試験や職場のコミュニケーションなど)はまだまだ対面式の旧来の方法が多い。そのため普段対面式のコミュニケーションの機会が少ないと、対面のコミュニケーションに苦手意識を感じたり、慣れていないため苦労しているように感じる。若い世代の中にも対面コミュニケーションが得意でSNSも使いこなす若者もいる。但し、病的にインターネットにはまっていく若者は、周囲との対面のコミュニケーションに慣れていない。加えて不登校や引きこもり等で、学業や仕事、今後の人生に大きな悪影響を及ぼす。

3.SNS使用がコミュニケーション、日常生活に及ぼす問題を架空事例から考える

1.はじめに/SNSとは/代表的なSNSと特徴
2.SNS使用による問題とコミュニケーション問題
3.SNS使用がコミュニケーション、日常生活に及ぼす問題を架空事例から考える
4.SNS問題予防のために/まとめ

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