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こころの健康シリーズZ 21世紀のメンタルへルス

No.7 インターネットを活用した簡易型認知行動療法による職域メンタルヘルス支援

加藤典子 1)2) 宇都宮健輔 1)3)
1)国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター認知行動療法センター
2)慶應義塾大学医学部 精神神経科学教室
3)産業医科大学医学部精神医学教室


ストレスチェック制度における高ストレス者に対する支援

  次に、職場ストレスを感じている労働者に対する支援を整理してみましょう。職場ストレスに対するわが国のメンタルヘルス対策の大きな柱として、平成27年12月より施行されたストレスチェック制度があります。この制度は、「労働者のストレスの程度を把握し、労働者自身のストレスへの気付きを促すとともに、職場改善につなげ、働きやすい職場づくりを進めることによって、労働者がメンタルヘルス不調となることを未然に防止すること(一次予防)」を目的としており、50人以上の労働者を使用する事業場には1年に1度ストレスチェックを実施することが義務付けられています。

  それでは、高ストレス状態の労働者には、どのような支援が行われるのでしょうか。ストレスチェック制度では、高ストレスに該当した労働者が希望した場合、医師による面接指導を受けさせることが事業者の義務とされています。「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル」によると、医師は面接においては保健指導(ストレス対処技術の指導・気づきとセルフケア)と、必要に応じた専門医療機関への受診指導の2つの医学上の指導を行うことになっています。さらに、面接から得られた情報や専門医療機関の受診の結果に応じて、職場環境調整・休職といった事後措置が実施されることもあります。一方、医師の面接指導を希望しない者に対しても、産業保健スタッフ等による相談対応やその体制整備が推奨されています。しかし、現在のところ、医師の面接で専門医療機関の受診や職場環境調整を必要としないと判断された労働者に対して実施できる事後措置や、産業保健スタッフによる相談対応の方法は具体的に示されていません。

4つのケアと現状の2つの支援

  先述の職場復帰後の労働者に対する支援と、高ストレス労働者に対する支援を、厚生労働省の「労働者の心の健康保持増進のための指針」で推奨されている4つのメンタルヘルスケアの枠組みで整理してみました(図1)。職場復帰をする労働者が継続して受けている薬物療法を主体とするうつ病治療については、「事業場外資源によるケア」に、職場環境調整は「ラインによるケア」と「事業場内産業保健スタッフ等によるケア」に該当すると考えられます。

  高ストレスの労働者に対する支援については、医師の面談や産業保健スタッフによる相談対応は「事業場内産業保健スタッフ等によるケア」に該当します。さらに、それらの面談や相談で実施される受診指導・受診勧奨によって労働者が新しく専門医療機関を受診すれば「事業場外資源によるケア」に該当し、職場環境調整・休職といった事後措置がなされれば、「ラインによるケア」が実行されることになります。

  この枠組みで整理をすると、「セルフケア」に対する支援が不足していることが分かります。そこで、私たちは「セルフケア」の支援として簡易型認知行動療法プログラムを開発しました。

4つのケアと現状の2つの支援
図1. 4つのケアと現状の2つの支援

簡易型認知行動療法とは/2つの簡易型認知行動療法プログラム/終わりに

はじめに/職場復帰後の労働者に対する支援の現状
ストレスチェック制度における高ストレス者に対する支援/4つのケアと現状の2つの支援
簡易型認知行動療法とは/2つの簡易型認知行動療法プログラム/終わりに

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