わが国のメンタルヘルス推進運動の発展を願って

公益財団法人　日本精神衛生会　理事長　小島卓也

ごあいさつ

科学技術の発展は目覚ましいものがありますが、様々な心の問題は未解決のまま推移し、さらに顕在化しています。全国の児童相談所での児童虐待に関する相談対応件数は急増し、死亡例も増えています。教育現場では、不登校、いじめなども続いております。これらの小児期や思春期の問題がその後の精神疾患への発展につながる例がしばしば見受けられます。また、一時よりも減少してきましたが自殺率の高さも際立っています。貧困や孤立などの影響もありますが同時にメンタルヘルスの問題でもあり総合的な対策が必要です。一方、精神障害者への対応は、早期に発見し治療することがその後の経過に良い影響を与えることが明らかになってきました。障害者の方々の就労支援も不十分ですが積極的に行われるようになりました。しかしまだまだ地域で生活していくための施設と支援は不足しています。当事者や家族の方々が自尊心と自信を回復して希望をもって進めるように援助していくことが求められています。

日本精神衛生会は1902年に精神衛生のNGOの団体として創設されて以来、115年の長い歴史をもつ団体で、現在公益財団法人として活動しています。社会の変化に伴って複雑化しているメンタルヘルスに関する諸問題に対して、いろいろな角度から迫っていくために、さらに活動の場を広げながら市民の方々と一緒に運動を進めていきたいと考えています。趣旨にご賛同いただける方々には是非当会にご加入くださり、ご理解とご協力をお願い申し上げます。