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心と社会 No.143 42巻1号
巻頭言

林 宗義先生を偲んで

浅井 邦彦
(医療法人静和会浅井病院 理事長・院長)

1.第20回世界社会精神医学会
  第20回世界社会精神医学会が昨年10月23日(土)〜27日(水)、アフリカ・モロッコのマラケッシュで開かれた。会議には1,300名余(うち日本人は20名余)が参加していた。世界社会精神医学会は3年毎に開かれ、前回はチェコのプラハで開かれた。今回はProfessor Dris Moussaoui氏(Chairman of the Organizing Commitee)、Professor Nadia Kadri女史(Vice-Chair, Organizing Committee)が主催し、24日にはNorman Sartorius氏(スイス)による基調講演VII“Are Any of the Current Paradigms of Psychiatry Still Valid?”が行われた。市長さんの招待で開催されたウエルカムレセプションで、Sartorius夫妻とは親しく話が出来た。25日は王宮でのガラ・ディナーが開かれた。
  26日からは、マラケッシュを出発し、アトラス山脈・ティシュカ峠(2260m)を越え、世界遺産であるアイト・ベン・ハドゥヘ向った。27日は、ワルザザードからダデス谷を経由してカスバ街道、ティネリールへ向かった。28日は、朝5時頃起床、ラクダにゆられて40分程行き、サハラ砂漠の日の出を堪能した。その日の没する国の砂漠の日の出は素晴らしかった。29日は、起伏のある迷路のようなフェズのメディナ、そして世界遺産・フェズエル・バリを観光した。その後カサブランカへ向かい、宿泊した。30日に、パリで乗り継いで31日夕方、成田空港に到着した。
  なお、第21回世界社会精神医学会は、2013年6月29日から7月3日ポルトガルのリスボンで開催される。

○今年海外で開催される学会など
1)世界精神保健連盟(WFMH)アジア地区会議
   世界精神保健連盟(WFMH)アジア地区会議が3月4日(金)〜5日(土)、シンガポールで開催される。Poshe Poh(Silver Ribbon Shingapore)
2)世界精神保健連盟(WFMH)国際会議
   世界精神保健連盟(WFMH)国際会議が10月17日(月)〜21日(金)、南アフリカ共和国のケープタウンで開催される。どんな国なのか、楽しみである。

2.林 宗義先生亡くなる
  林 宗義先生は昨年7月20日カナダのバンクーバー市で死去された。享年89歳で、奇しくも父利勇と同年齢であった。
  私と林 宗義先生との出会いは、1975年の世界精神保健連盟バンクーバー世界会議の時以来であるが、それ以来公私にわたってご指導をいただき、更に健康維持に欠かせないテニスの楽しさを教えて下さった。世界精神保健連盟や世界精神医学会など、関連の国際会議へも出席した。海外の著名な精神科医であるプショー教授、サルトリウス教授、その他多くの方々とも知り合いになり、精神保健の専門家の知己が出来、学ぶところが多くあった。中国との交流も林先生と20年以上の深い関係があり、北京の崔玉華先生と上海の王祖承先生との交流も深く、現在まで続いている。
  顧問として研究のご指導をいただいた林 宗義先生と私共の関係では、1986(昭和61)年1月6日、林先生と会合を持ち、林先生が長期入院患者の治癒係数に関する論文のまとめをされた。同年4月には精神障害者に関する映画を制作するため円城寺プロダクションの円城寺 進さんが病院に1週間滞在し、患者さんと友達になって撮影した。その後、円城寺さんは私が紹介した林先生を訪ねて「カナダの精神医療」の撮影のため2週間カナダに出かけられた。同年11月3日、新病棟落成記念式典が開催され、林先生は「病院の開放について」の講演をされた。
  1948年にロンドンで創立された世界精神保健連盟(WFMH)は、世界会議が2年ごとに開かれているが、1989年はニュージーランドで開かれ、40カ国、約1,000名が参加し、日本からは80名余が参加した。WFMH名誉会長の林 宗義先生もLinシンポジウム「地域精神保健と基地としての精神病院」を主催され、私はこのセッションで発表した。WFMH評議会の決定を経てWFMHの新副会長(西太平洋地区担当)に私が選ばれ、更に1993年の国際会議は日本での開催に決まった。
  1994(平成6)年11月23日、新築落成記念式典では林 宗義先生が講演された。1999(平成11)年11月23日、浅井病院創立40周年記念式典及び祝賀パーティーが開催された。500余名が参加し、理事長、院長(私)、施設長の挨拶に引き続き理事長のレリーフの除幕、更に林 宗義先生が祝辞を述べられた。
  私が2002(平成14)年7月脳梗塞(左脳)で入院した折りには、台湾からの帰国の途中にお見舞い下さり、励まして下さった。
  2004(平成16)年3月22日、林 宗義先生の来院があった。東大での講演の帰途立ち寄られたが、同年1月と2月に私が出版した「脳と心の調和に向かって─新しい精神医学と福祉─」「スティグマと差別を超えて─脱施設化と地域ケア─」の2冊を差し上げると、私の回復ぶりを大変喜んで下さった。その後、新しい外来棟やヤマザキ・ショップなどを見学された。
  林先生と出会い、ご指導を受け、ご一緒にお仕事出来たことは、私にとって大変幸せなことでした。林 宗義先生のご冥福を心よりお祈り申し上げます。

3.おわりに
  林 宗義先生は亡くなられ、生前、私の回復ぶりを大変喜んで下さった。
  さて、平成23年が始まった。今年はどのような年になるのであろうか。
  一昨年の政権交代により、多少改善されたが、医療、福祉は依然厳しい状況にある。更なる改善を求めて、皆で一緒に頑張ろうではないか。

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