4.子どもは、いろいろな理由で学校に行くことを嫌がる
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どんな子どもも、学校に行くことを嫌がることがあります。
風邪を引いて学校を休んだ 後に、風邪が治っても学校に行き難く、「頭が痛い」といってもう一日位休むことがあります。
誰もが経験してきたことです。
お友達とのトラブルでいやな思いをしたり、陰湿ない じめを経験したり、教師の配慮に欠けた乱暴な態度に接しますと、子どもは敏感に反応して登校を渋ることがあります。
両親の強圧的な養育態度に押しつぶされそうになったり、 家庭内のトラブルのために不安になっている子どもは、家から離れられなくなって登校で
きなくなることがあります。
また、子どものうつ病や精神分裂病の症状のために登校できないことがあります。
精神 遅滞、自閉症、学習障害の子どもが、子どもの発達レベルを無視した不適切な指導を学級で受けている場合、登校を嫌がることがしばしばみられます。
家族の学校教育に対する考え方や経済的理由などで、親が子どもを登校させないこともあります。
また、子ども自身が自分の生き方に疑問を持って悩み、他の子どもとは異なる生き方を しようとして登校を積極的に拒否することもあります。
その一方で、怠けて学校に行かないこともあります。
最近、毎日、少しづつ目を覚ますのが遅れる睡眠覚醒リズムの障害のために、登校でき なくなってしまうケースのあることが見い出され、ビタミンB12療法が有効であることが判ってきました。
まるで海外旅行で経験する「時差」のようなものです。
このように、子どもが学校に行くことを嫌がるのには、実にさまざまな理由があるのです。
学校に行かない子ども達を、「不登校」と画一的に呼び、同じように扱うことは無意味なのです。
こころの発達の過程で、どの子ども達もさまざまな困難を経験しますが、それを乗り越えることによってさらに成長していきます。
ところが、最近の子ども達には、乗り越えるべき問題が多過ぎますし、ハードルが高過ぎるようです。
不登校の子どもは、学校での挫折・いじめなどの体験をきっかけに、問題を 乗り越えることができなくなってしまい、学 校から逃避し家庭の中に閉じこもってしまう
のです。
勿論、子ども達を家庭に閉じこもら せてしまうような要因が、現在の学校教育や 地域社会、さらに家庭の中にあることが問題 ですし、「登校しない」ということが両親や教師を最も悩ませるショッキングな出来事とな
ってしまったことに問題があるのです。
いろいろな悩みを持つ子どもは、さまざまな行動を症状としてあらわしてもよいはずです。
なぜ「不登校」だけが子どもにとっての「最強 のカード」になってしまったのでしょうか。
情緒的な問題を持つ子どもが学校で嫌な体験をしますと、まず、身体的な症状を訴えて登校できないことを両親に伝えようとします。(初期)
これは、「問題解決の場に登場するための入場券」を差し出すことなのです。
たいていの場合、小児科を訪れて診察を受けますが、自律神経失調症、起立性循環障害、過敏性大腸炎などと診断されたり、「たいしたことはありません」といわれます。
病名を告げられた子どもの両親は、「病気のせいなら仕方がない」と納得しますし、「病気でもないのにずる休みしている」と叱りつけ、無理に登校させようとします。
しかし、子どもは自分の悩みの原因がどんなものかは判らなくても、大変辛いものであることはよく知っています。
学校にいけない状態が続きますと、子どもはいらいらし、家族が学校のことを話題にすると激しく興奮し、乱暴したり、物を壊したりします。(興奮期)
この時期の子どもは、まさにせっぱ詰まった状態に追い込まれており、両親の誤った対応に「危険信号」を出し、 一刻も早い救いの手を求めます。
折角危険信号を出して問題に気づいてもらおうとしても、 両親が当惑して、腫れ物に触るような態度をとり続けていますと、子どもは疲れきってしまい、危険信号も出さなくなります。
昼夜が逆転した生活となり、気力を失い、家族から も孤立した無為な日々を過ごすようになります。(慢性期)