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No.1 現代家族とメンタルヘルス

大阪市立大学名誉教授  本村 汎


2.「心の健康」ー家族と企業と国家と地域社会との関連ー

  人間は誕生直後から体質や気質をもっていますが、それは「心」とは異なります。人間の心、たとえば、あたたかさ、思いやり、積極性や消極性、忍耐、寛容、共感性などは誕生直後には存在しません。脳のはたらきが「心」の形成基盤である、という理論的な考え方もありますが、しかし脳のはたらきは、その人の他者とのかかわり合いによっても影響を受けます。ところで、人間の「原初的経験」は家族との関係でおこなわれますので、心の基本的な形成基盤が家族であるという考え方には、説得力があると思われます。

 ところで、現代家族は企業、国家、地域社会と機能的に密接に結びつき、不景気になって企業が収益をあげられずに不安定になってくると、そこで従業員として働いている夫、妻、子どものなかには企業の合理化の名のもとに解雇されてしまう場合があります。もしそうなると、解雇された本人は収入源をたたれてしまうために、不安、ストレス、あるいは神経症的症状や、うつ症状を引き起こし、いわゆる「心の健康」は維持出来なくなってきます。また国家との関係では、たとえば、国家の政策である年金制度が形骸化してしまうと、老後の生活が脅かされるために、その時も、高齢者や家族の「心の健康」は、むしばまれていきます。さらに国家による経済・財政政策が失敗すると保健所・病院などの行政サイドからの支援的サービスが低下するために、家族は「機能不全」を引き起こし、その結果個人の「心の健康」は阻害されていくようになります。

 また、地域に住む隣人・友人・知人の間で「喜びや苦しみを分ち合って共に生きているという感情」が欠落し、さらには家庭生活のなかでも「個人化」や「私秘化」が肥大化して、家族構成員間の「連帯感」が欠落してしまいますと、家族構成員の「心の健康」存続は難しくなってきます。

3.「心の健康」を保つための方策を探る

1.現代の家族を舞台に演出される悲劇
2.「心の健康」−家族と企業と国家と地域社会との関連
3.「心の健康」を保つための方策を探る

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