三原聡子 北湯口孝 橋本琢麿 前園真毅 上野文彦 中山秀紀 樋口 進 コミュニケーション問題と合宿治療プログラム韓国では2007年から、Rescue Schoolというネット依存治療のためのキャンプが実施されています。内容は、通常のキャンプに加え、認知行動療法などの治療プログラムが取り入れられたものです。韓国の合宿治療プログラムに携わるスタッフの方に、その治療効果を質問したところ、「困ったときに周囲の人に相談できる対社会力をはぐくむ」とのことでした。プログラム終了1年後の転帰は、7割回復するとのことです。ここでいう回復とは、ネット使用が対象者の社会的機能を阻害していない状況、とのことでした。レスキュースクールは、このように介入効果を発揮しており、今後、さらに規模を増やして継続されるとのことでした。 わが国でも、2014年から文科省の委託事業として、国立青少年教育振興機構が受託し、久里浜医療センターが協力してネット依存治療キャンプを開催しています。 実施場所は、関東甲信越内の国立青少年自然の家にて行いました。本キャンプを8月に8泊9日で行い、その約3か月後にフォローアップキャンプを実施しました。参加したのは久里浜医療センターに相談のあった14歳から23歳の主に中高生男子10名から17名でした。実際には、メンターと呼ばれるボランティアの大学生たちとともに集団生活を行いながら、基本的な生活習慣を整え、キャンプやトレッキングといったネット以外の楽しみを見つけるプログラムとともに、集団・個人認知行動療法、個人カウンセリング、家族会などといった治療的介入を織り交ぜたプログラムが実施されました。 実際に実施した感想として、キャンプ前に比べてキャンプ後に、子どもたちがよく話すようになったと強く感じました。キャンプ中、このキャンプがネット依存治療のキャンプであることを忘れてしまうほど、子どもたちとメンターたちは、これまでの生活、生き方を振り返り、これからの生き方について、よく話し合う様子が見られます。キャンプの終わりの会では、多くの参加者が皆の前で「メンターと色々な話ができてよかった」「人と関わるって楽しいことだと思いだした」と語ります。ネット依存治療はこのキャンプの入り口に過ぎず、このキャンプの本質は、自分が集団の中で受け入れられ、自分も他のメンバーを受け入れ、信頼できる人間関係を築くことで、これからの人生について自信を取り戻してゆくことにあるようです。そしてこれからの人生について自信を取り戻すことこそ、現実から目をそらしてネットの世界に没入してしまっている、ネット依存の子どもたちの回復に必要なことではないでしょうか。 ネット使用も含めた本プロジェクトの有効性検証のためには、長期的な追跡調査が必要であると思われます。しかし、短期的には、本キャンプの前後で参加者のゲームの使用時間の減少がみられています。また、ご飯を一日3回食べるようになったとか、家でお手伝いをするようになった、合宿前に不登校であったが、合宿後に新しい学校を見つけて通いだしたといった参加者も何人かみられています。 表3. ネット依存治療キャンププログラム内容 はじめに/ネット依存の実態 |
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