メンタルヘルスとウォーキング
九州保健福祉大学教授
1.現代はウォーキングブームの時代 中高年者を中心にしてウォーキングが大流行している。 総理府世論調査によると、 この1年間にウォーキングを行った人は全人口の 32%に上り、 これは各運動・スポーツ種目の中で、 体操 19%、 ボウリング19%、 球技 17%等を上回って第1位だったという1) 。ウォーキングとは、 従来の散歩から進化して「健康を意識して多少なりともサッサと歩く」という行動のことをいう、 と考えれば良いであろう。 気をつけて見回してみると、 早朝、 昼休み、 夕方、 夕食後などいろいろな時間帯にそれらしき人たちがヒタヒタと歩いている姿を見かけるではないか。 トレパンやズボン、 スポーツシャツやトレーナーといういでたちが多く、 何よりもウォーキングシューズと呼ばれる軽快な靴を履いているのが特徴である。 それとは別に、 里山歩きや名所旧跡めぐりが多いのだが、 休日などに旗を先頭にしたグループによるウォーキングイベントが花盛りである(写真)。 主婦が数人連れだって歩くという雰囲気の「早朝・夕闇ウォーカー」に比べると、 こちらのほうはもう少し高年齢といえよう。 ヤッケやベスト、 帽子、 リュック、 手袋という服装が多く、 靴もややごつい感じのアウトドアタイプが多くなっている。 32%といえば全人口の3分の1に当たるのだからこれは無視できない。 そして体の衰えが気になりだす中高年者になると「健康のために何かをしなければ」と考えるようになり、 中でも歩くことが1番手軽な健康法だと考えるらしい。 筆者の調査によると、 50歳代以上の年齢層になると70%以上の人が「意識して歩くようにしている」と答えている(図1)2) 。そこで彼ら中高年者が考えている健康上の問題とは何かが気になるところである。 そこで現代大学生の両親(40〜50歳代)を対象にして、 生活習慣病の原因(冠危険因子)となりうる10項目を示し、 自己判断による該当率を調べたところ、 父親;運動不足、 ストレス、 喫煙:母親;運動不足、 ストレス、 肥満症の順であった(図2、3)3)。 こうなるとウォーカーたちの心の中がだんだん見えてくるというものである。 何よりも「運動不足」「ストレス」が共通した悩みであり、 それを解消しようとしてウォーキングに参加する、 という図式なのである。 もしこれが本当ならば、 ウォーキングが現代中高年者のメンタルヘルス維持・増進にとって効果がある、 という結論に達するであろう。
1.現代はウォーキングブームの時代 |
|||||||