3.ウォーカーの実態を見ると 前述のように各団体によるウォーキングイベントが花盛りのこの頃であり、 広報メディアに載ると参加者が千人の単位で集まる時代である。 たとえば(財)日本万歩クラブ、 (社)日本ウォーキング協会はいずれも1965年に発足して以来特に近年は活動が活発化しているが、 両者とも年間100回程度の「歩くイベント」を提供している。 中でも後者は日本協会の下部組織としての各県組織による活動が年間千件を越すという盛況ぶりである。 さてこれらのウォーカーやウォーキングイベント参加者の健康・意識の実態については、 筆者も多数の研究発表を重ねている。 ここではその一部のデータを図表(図5、 表1)7、 8)で紹介しながら、 その平均的なライフスタイルやメンタルヘルスの様子を説明しよう。
まずイベントに好んで参加するウォーカーの平均年齢は60歳前後である。 7、 9、 10、 11、 12) いわゆるジョガー(平均30歳代)がジョギングを「卒業」して歩くに至ったと見るのも一方法であるが、 実際には「速く走らないと気がすまない(タイプA)」ジョガーに対して「老化と運動不足を感じるのでともかく歩いて少しでも体に良いことを積み上げたいし、 歩けば気分が良い」と感じるウオーカーは対照的である。 前者は生まれつきのアスリートタイプ、 後者は不器用ながら生命を大切にと心掛ける努力家タイプである7)。 ちなみにウォーカーは、 社会人非ウォーカーと比べると、 運動不足、 ストレスの度合いが少なく、 運動行動は圧倒的に多いが、 年齢なりに高血圧や動脈硬化の悩みは抱えている。 冠危険因子合計数も、 一般勤労者グループと比べると、 平均年齢が高い分だけ少し多い(2.92 vs 2.72)10) 。女性ウォーカーは食習慣に関して男性に比べて健康を強く意識した栄養摂取状況にあり、 一方男性はイベントやスポーツに強く傾斜した姿勢を持っている12)。 ウォーカーは運動習慣があり、 体力があるほかに、 疲れにくく、 人生への「ハリ」もより強く持ち、 QOLが高い8)。 こう考えてくると、 ウォーキングにのめり込んだ人たちは、 高齢社会の中でよく自立していける人たちであり、したがって他人に依存する度合いも少ないし、 メンタルヘルス上も問題は最小限ですむ人たちであるといえる。 実際問題、 ウォーカーは下半身の筋力が保たれているので、 転倒事故が起こりにくく「寝たきり」を招く率も少ない。 多少の研究結果からすると、 一定距離をやや早めに歩ける高年者は、 健康度が高く、 寿命が長いと予想される13) 。問題は、 どうしたら特定の人が「歩こう」と思うようになるかである。 その辺の機序についてはこれからゆっくりと調べたいと思っている。 馬が水を飲もうとして行動を開始するのはどんなときなのか、これはメンタルヘルスの専門家諸氏から教わりたいところである。
1.現代はウォーキングブームの時代 |
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