種智院大学教授 小澤 勲 2.若年期幻覚妄想状態 長い人生を、大きな問題もなく過ごしてこられた高齢者が、突然のように「他人が黙って家に入ってくる」「家から出るとみんな黙ってじろじろ見る」「悪魔がささやきかけてくる」などと言い出すことがあります。 難聴、視力低下のある、独居あるいはそれに近い方、そして不思議に女性に多いのです。なかには、子どもが引き取ったり、入院、入所していただいただけで、薬物などを使用しなくてもなおってしまう方もあります。 高齢に至るまでの生き方に「堅さ」があって、それが崩されるような出来事に遭遇したことが契機になって発症する方が多い、と私は考えています。例えば、几帳面で負けず嫌い、一途に役割を果たしながら、波瀾万丈の人生を自分の力で乗り切ってきた人が、これから人に頼って生きなければならない、と思い知らされたというようなときです。人に面倒を見られるくらいなら死んだ方がマシなどと感じるのです。 あるいは、奇人変人と言われ、人とのつきあいを極端に避けて生きてきた人が、身体的不調を来たし、ケアを受けることになったときに、今まで保ってきた対人的距離が崩されると感じるのです。
1.高齢者は心のゆらぎを行動として表現する |
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