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No.6 ドメスティック・バイオレンス
-古くて新しい家庭の問題-

立命館大学教授 中村正


加害者への対応

 では、DVに介入する司法制度や臨床技法はどのように位置づけられ、展開されるべきなのでしょうか。 諸外国ではDVや虐待のケースについて、加害者向けのカウンセリング等受講命令という「暴力の脱学習プログラム」が導入されています。 日本はこうしたタイプの加害者対応を実施していません。 いくつかの民間相談機関の取り組みであるDV加害者向けのグループワークがあるだけです。 たとえば、筆者もその一員である「メンズサポートルーム」での活動があります。 精神科医やカウンセラーが主宰するグループワークもあります。 グループワークだけではなく、個人の相談や場合によっては夫婦面接をおこなうこともあります。 最終的には離婚となるケース、あるいは再同居を希望するケースがあります。 子どもへの虐待が含まれているケースもあります。 20代の若者から60代の高齢者まで、職種も、暴力の形態も、家族の事情も異なるDV加害男性たちが集まってきます。

 加害男性は「できれば来たくない自主的参加」という矛盾した気持ちを抱いて参加します。 しかし、この「曖昧な動機」は、援助者の貴重な手がかりです。 DV加害男性たちのグループワークでの語りから垣間見えることはたくさんあります。 筆者の経験から整理すると次のようなことになります。 1)暴力を振るうことへの独特な認知(女はこうすべきだ等)と行動(男ならなぐるもんだ等)と感情の傾向を持っていること、2)思うようにならない事態への対処が暴力としてでてしまうこと、3)妻に言葉で責められたあげくの行動化として暴力がでてくる場合もあること、4)妻や母など愛着対象への依存的な心性があり、暴力として発現させてしまうこと、5)伝統的な家族観や女性への意識や性別役割意識を育った家族のなかで学習してきたこと等です。

 グループワークに継続して参加し、自己をみつめ、暴力を認知し、変化の方へと歩み出すことそれ自体がとりあえずは大事だと考えています。 この過程は、男らしさ意識の変容、女性依存の克服、自立的な家族観の涵養ともいえます。 こうして生き直しへの貴重な一歩がはじまるのです。 その結果、被害者への謝罪や反省へといたります。

DVへの介入と加害者へのアプローチは、再び加害者にならないことを援助することが社会の安全を確保し、被害者の安全を保障する上でも大切だという意味で必要なことです。 DVの加害は、行動化され身体化され、非言語化され感情化され、ジェンダー化された、つまり愛着対象への変形された「欲求」(自分のものにしておきたい、思うようにならない感情のはけ口等)だと理解できます。 社会的対応としては、対人暴力をともなうので、毅然とした第三者の介入による被害者の救済が危機介入として必要ですし、さらに分離の後には、心理社会的な行動変容への支援による加害者への更正的な援助が必要となります。 その手法や技法や理念はすでに民間の援助者により開発され、実践されています。

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