昭和医科大学発達障害医療研究所 所長 太田晴久
3. おわりに
成人発達障害支援学会は、多職種連携とグループ支援を重視し、当事者同士の相互作用を治療的資源とする実践を基盤として発展してきた。また、この理念と実践に共鳴した支援者、当事者、家族が全国に広がり、学会の規模も回を重ねるごとに拡大している。
以下は学会設立の趣旨について当時のニュースレターに記載されていた加藤進昌理事長のコメントである。
学会化が必要だと考えたのは、直接的にはショートケアプログラムが診療報酬加算の対象になったことでした。昨今の医療費削減の嵐の中で、加算を獲得したのは画期的なことだと喜んだのですが、一方で税金を使うからには効果の検証と質の担保が必須であり、それを担うには学会として責任を持たなければいけないだろうと考えた次第です。(中略)
本学会は、医療職すべてがチームとして連携することで目的を達成しようとするところに主眼があります。デイケアはグループで実施するものですから、メンバーである当事者の果たす役割も大きいはずです。集団のダイナミクスが治療効果の源泉です。それは同時に、この学会の活力の源泉にもなるはずだと信じます。会員皆さまの力を結集して、発達障害者支援の流れを確かなものにしていきたいと思います。
この言葉に示されているように、成人発達障害支援学会は、当事者と支援者がともに関わる実践の場として、単なる支援技術にとどまらず、集団のダイナミクスを基盤とする支援のあり方そのものを提案、更新してきた。本学会の大きな特徴として、当事者の高い参加率が挙げられる。とくにこの数年において急増しており、直近の東京大会では、当事者・家族・学生が参加者全体の約4分の1を占めていた。
近年、神経多様性、共生社会、研究における患者・市民参画(PPI)といった概念が広く取り上げられている。本学会では、当事者の参加にとどまらず、発表者としての参画も活発であり、これらの理念はすでに学会のなかで具体化されている。こうした点は、「新時代の学会」のあり方を先取りするものといえる。
もちろん、このような学会文化は一朝一夕に形成されたものではない。研究会以来、学会員による日々の実践の積み重ねを通じて、当事者が参加しやすい環境が醸成され、現在の学会文化が形成されてきたと考えられる。
次期大会は渡川病院の吉本啓一郎大会長のもと、「いま、地域での発達障害支援とは ―発達障害支援プログラムで得られた知の社会実装―」をテーマに高知県で開催予定である。成人発達障害支援に関する新たな支援のあり方がさらに更新されていくことが期待される。
成人発達障害支援研究会・学会 年次大会一覧
| 大会 |
場所 |
日程 |
テーマ |
大会長 |
副大会長 |
参加者数 |
専門プログラム研修 参加者数 |
一般演題数 |
| 第1回(研究会) | 烏山病院 リハビリテーションセンター | 2013年11月1日 | 昭和大学発達障害医療研究センター 開所記念講演会 | 加藤進昌 | ― | 194 | ― | 10 |
| 第2回(研究会) | 昭和大学上條講堂 | 2014年11月8日 | ― | 加藤進昌 | ― | 184 | ― | 18 |
| 第3回(研究会) | 昭和大学上條講堂 | 2015年9月26日 | 発達障害と就労 | 加藤進昌 | ― | 157 | ― | 11 |
| 第4回(研究会) | 昭和大学上條講堂 | 2016年11月19日 | 発達障害と教育 | 加藤進昌 | ― | 106 | ― | 12 |
| 第5回(研究会) | 昭和大学上條講堂 | 2017年10月14日 | ― | 加藤進昌 | ― | 112 | ― | ― |
| 国際カンファレンス | 一橋講堂 | 2017年10月15日 | 自閉症研究の今―社会の課題に挑戦する― | 神尾陽子 | ― | 178 | ― | 65 |
| 第6回(札幌大会) | さっぽろ駅前クリニック 日興ビル分院 | 2018年10月27-28日 | こどもから大人までの切れ目のない支援に向けて | 横山太範 | ― | 169 | 44 | 23 |
| 第7回(名古屋大会) | 金城学院大学 | 2019年10月26-27日 | 成人発達支援の新しい展開−家庭・学校・地域社会− | 大村豊 | 定松美幸 | 350 | 110 | 37 |
| 第8回(滋賀大会) | 滋賀医科大学 | 2021年11月6-7日 | 発達障害者の多面性とその多角的支援 | 大井健 | 尾関祐二 | 260 | 32 | 11 |
| 第9回(岡山大会) | 岡山国際交流センター | 2022年12月3-4日 | 共感する・つなぐ・伴走する | 来住由樹 | 武田俊彦 野口正行 | 293 | 65 | 30 |
| 第10回(横浜大会) | 横浜ワールドポーターズ | 2023年10月21-22日 | こどもと大人、支援者と当事者をつなぐ 〜ニューロダイバーシティを見据えて〜 | 柏淳 | 木代眞樹 | 358 | 65 | 31 |
| 第11回(大阪大会) | 大阪国際交流センター | 2024年9月7-8日 | 病態理解に基づく成人発達障害の治療と支援 | 安田由華 | ― | 412 | 106 | 59 |
| 第12回(東京大会) | 一橋講堂 | 2025年10月11-12日 | Care with Peers 〜生涯にわたる支援〜 | 太田晴久 | 丸田伯子 | 551 | 113 | 64 |