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No.6 子どもの時間意識を育てる
-今を大切にする生き方-

中央大学文学部教授 都筑 学
イラスト さこんまどか


1.子どもの生活時間の過ごし方

調査企画・分析メンバーの一人として筆者も加わった「放課後の生活時間調査」(Benesse教育研究開発センター,2009)は、小学5年生から高校2年生までを対象に、子どもの生活時間の実態と意識についてさまざまな角度から検討したものである。調査対象者は、全国からサンプリングされた小学生2,603人、中学生3,592人、高校生1,822人、合計8,017人である。最初に、その調査結果にもとづいて、子どもの生活時間の過ごし方の特徴について見てみよう。

一日24時間の中で、私たちがおこなう行動は、大きく3つに分類できる(総務省,2008)。第1は、1次活動であり、睡眠・身の回りの用事・食事など、人間が生きていく上で生理的に必要な行動である。第2は、2次活動であり、通勤・通学、仕事、学業、家事、介護など、各個人が家庭や社会の一員としておこなう義務的な行動である。第3は、3次活動であり、各個人が自由裁量時間におこなう活動である。これには、ラジオ・テレビ・新聞・雑誌、休養・くつろぎ、趣味・娯楽、スポーツ、社会参加活動、交際・付き合いなどが含まれる。

一般に、小・中・高校生においては、学校にかかわる2次活動が主要な活動となり、1次活動と合わせて一日の生活時間の多くを占めることになる。また、習い事・学習塾・部活動・アルバイトは選択可能な活動である一方で、一度選択すると続ける傾向が高い、比較的拘束性の強い活動である。これを2.5次行動とする。

調査結果から、2.5次行動の量が1時間未満から4時間以上まで増加するにしたがって、自分で自由に選択しておこなうことのできる3次行動の時間数が減少していくことがわかった。それに対して、1次行動や2次行動の時間数はほぼ一定していて、2.5次行動の量の多少には左右されなかった。2.5次行動の時間が長い子どもは、複数の行動(習い事・学習塾・部活動・アルバイト)をかけもちしている傾向があった。図1に示されているように、2.5次行動の量が多いほど、小・中・高校生のいずれにおいても、忙しいと感じる割合が高まることも明らかになった。

自由時間の使い方には性差が見られた。女子は男子よりも自由時間が長い傾向にあり、携帯電話、音楽を聴く、ぼーっとするなどの受動的な活動が多かった。男子が女子よりも多かったのは、テレビゲームや携帯ゲーム機で遊ぶ、外で遊ぶ・スポーツをするという活動だった。

就寝時刻の平均は、小学5年生で22時4分、高校2年生で0時4分であり、学年が上がるにつれて就寝時刻が遅くなっていくことがわかった。他方で、起床時刻の平均は、最も早いのが高校1年生で6時30分、最も遅いのが中学3年生で6時50分であり、どの学年でも起床時刻にはあまり大きな差はなかった。睡眠時間の平均は、小学5年生が8時間36分、高校2年生が6時間32分であり、学年が上がるにつれて睡眠時間が短くなっていくことが示された。睡眠時間の長さを長・中・短の3群に分けて、その特徴を検討してみると、睡眠時間の長い子どもは短い子どもに比べて、規則正しい生活を送り、忙しさをあまり感じていないことがわかった。

さらに、子どもの生活の中で重要な位置を占める遊びの時間について検討してみると、小・中・高校生と学年が上がるにつれて、屋外の遊び・スポーツに比べてテレビゲームをして過ごす時間の割合が高くなることが明らかになった。さまざまなメディアと接する時間の中では、本・新聞などを読む時間に比べてテレビ・DVDを視聴する時間が圧倒的に長いことがわかった。小・中・高校生と学年が上がるにつれて、携帯電話やパソコンを利用する時間が長くなっていくことも明らかになった。

2.子どもの時間の使い方の自己評価

1.子どもの生活時間の過ごし方
2.子どもの時間の使い方の自己評価
3.子どもの時間意識を育てる

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