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No.6 子どもの時間意識を育てる
-今を大切にする生き方-

中央大学文学部教授 都筑 学
イラスト さこんまどか


3.子どもの時間意識を育てる

以上のように、現代を生きる子どもの生活は多忙化している傾向にあるとともに、ゲームや携帯電話・パソコンなどの情報化社会における新しいメディアとの付き合いも大きな位置を占めている。一日は24時間と限られている。ある活動をおこなう時間を確保しようとすれば、別の活動をする時間を削らなければならない。習い事、学習塾、部活動、アルバイト、テレビゲーム、携帯電話など、子どもにとって、選択肢は山ほどある。その中から、いかに上手に自分のやりたいことを選び出して、生活時間を組み立てていくかが、子どもにとって重要な課題となる。また、そうした活動をいかに支えていくかが、子どもを取り巻く周囲の大人たちにとって大切な課題である。

時間の使い方の上手な子どもは、生活の規則性や計画性という点で優れており、規則正しく毎日を過ごしたり、計画的に物事に取り組んだりすることができる。こうした能力は生活時間を組み立て、構造化していくには不可欠である。この根底にあるのは、区切るという行為である。区切るということは、物事に区切りをつけることであり、ある時点まで自分の注意を集中していたものから別のものへと、自分の注意を切り替えることである。学校では、毎日、時間割にしたがって、授業がおこなわれる。1時間目、2時間目と進むにつれて、授業時間ごとに違った教科の勉強に注意を集中しなければならない。一つの授業の中でも、先生の発言や質問にしたがって、注意の切り替えをおこなっていくことが求められる。こうした外的な要因によっておこなわれる注意の集中と切り替えを積み重ねることは、自分の意志で実行できるようになる基礎として位置づく。一つの活動に没頭して時間を過ごした後には一息休んで、次に別の活動に没頭して時間を過ごす。このようにメリハリをつけて毎日を送っていくことが、時間意識の育成につながるのである。

時間とは、一日だけで終わるものではない。時間は、昨日、今日、明日とつながっている。それらの関係をどのようなものとしてとらえるかも、また重要である。多忙化している子どもの典型として、受験のために学習塾に通っている子どもがいる。彼らにとって、今日の活動は明日(受験に合格した後)のためのものとなっている。そのために、やりたいと思っている遊びを我慢して、机に向かって勉強するのである。そうした行為は、明日のために今日を犠牲にしているものだといえるだろう。もちろん、これから先の将来は大事なことではあるが、それ以上に重要なのは、今日という時間をいかに過ごすかということである。今日しかできないことをやる。子どもらしい充実した時間を過ごす。そうした「今」の積み重ねこそが、明日の人生を築く基礎となるのである。現在の活動を大切にすることが、時間意識の育成につながるのである。

1.子どもの生活時間の過ごし方
2.子どもの時間の使い方の自己評価
3.子どもの時間意識を育てる

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