日本大学文理学部社会学科 久保田裕之 近年の共同生活への眼差し:シェアハウスとグループリビングここ二十年の間、日本で最も急速に数を増やしてきたのは、いわゆる「ルームシェア/シェアハウス」と呼ばれる20代〜30代の若い世代を中心とした同世代型の共住形態である。それまで学生街などを中心に草の根的に営まれていた友人同士が家賃を折半するタイプの「ルームシェア」は、1995年頃を境にインターネットを通じた募集掲示板が重要な役割を担うようになり、現在では日本全国で常時数千件レベルの応募・募集を行うまでになっている。これに対して、1990年代からは事業者が介在して個別に契約・管理を行う事業者型の「シェアハウス」が増加し、2013年までの間に延べ2万ベッド以上に増加している。両者を比較すると、事業者型が知名度の上でも実態の上でも近年の「シェアブーム」を牽引しており、現在では、後者を「事業者型シェアハウス」、前者を「自主運営型シェアハウス」と呼ぶこともある。 こうした事業者型のシェアハウスは、営利事業者が介在することもあり、比較的居住者間の同質性を保とうとする傾向があり、多世代型のシェアハウスの試みに繋がっているとは言いがたい。たとえば、空室リスクを避けて運営コストを下げるためにも、できるだけ同質のニーズや生活上の関心を持っている方が望ましい。また、居住者間のコミュニケーションを活発化するためにパーティーやイベントを企画する場合も同様である。実際、事業者型シェアハウスで暮らす9割以上は20代〜30代の若年層であり、その7割以上は女性であり、事実上40代以上は入居を断られるという話も聞く。逆に、高齢者とシングルマザのシェアハウスや、子育て夫婦同士が共に住まうシェアハウスは、企画段階や説明会の段階からメディアの取材が入るなど、常に期待を込めて語られるものの、十分な継続性を持って運営されているものはほとんど無い。 これに対して、高齢者同士の共住形態としては、「グループリビング」と呼ばれるものが重要である。グループリビングは、先行する認知症高齢者のためのケアの共同購入という色彩の強い「グループホーム」とは異なり、比較的元気で自立した高齢者同士が、高齢者施設でもなく、孤立した単なる共同住宅でもない、協同的で共同的なこだわりの住まい作りを目指す試み全体を指す。もちろん、高齢期はいつまでも元気なままで過ごせるわけではなく、ライフステージに応じて医療や福祉との関わり、終の棲家としての看取りを視野にいれた法的問題も関わってくる。たしかに、若者同士のシェアハウスと同様、高齢者同士のグループリビングの場合でも、価値観やニーズの異なる若い世代と積極的に生活しようとすることは、別の困難を抱え込むことでもあり、慎重な対応が求められる。もっとも、グループリビングで暮らす高齢者と言ってもその年齢幅は広く、たとえば20歳以上年の離れた高齢者同士のグループリビングは、既に多世代型の共同生活の先進事例とみることも可能だろう。 3.多世代型コレクティブハウスの試み:合理的で民主的な協同生活の運営
1.はじめに:世代を超えて共に生きる |
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