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こころの健康シリーズ\ 現代の災害とメンタルヘルス

No.1 新型コロナウイルス感染症の最前線に立つ
医療現場で働く職員のメンタルヘルス

公益財団法人東京都保健医療公社 豊島病院 菊岡 藤香


はじめに

 2019年末に始まった新型コロナウイルス感染症(以下、COVID-19)は世界的流行に至り、今尚、猛威を振るっています。当院は第?種感染症指定医療機関として、初期からCOVID-19患者さんを積極的に受け入れています。同時に、精神科救急や周産期の行政的医療、救急・がんといった重点医療や緩和医療など、当院に与えられた役割も果たしつつ、感染の波に応じCOVID-19専用病床を増減させ、職員一丸となって尽力しています。こうした中、筆者は、公認心理師・臨床心理士として当院職員のメンタルヘルス支援に携わっており、第一波における支援については先に論じています1)

 本稿では、その後の様子にも触れながら、支援活動を通じて得た学びや課題などについて述べたいと思います。これは、私達が専門職としての知識や経験を携えつつ、支援の前例がない中、試行錯誤しながら積み上げてきた実践知であり、全ての現場にそのまま当て はまらないかもしれません。しかし、本稿を通じてCOVID-19の最前線に立つ医療現場で働く職員達の姿を知り、そのメンタルヘルス支援の重要性やエッセンスについて、共に考えていただける機会となれば、嬉しく思います。

COVID-19対応職員心理支援チームの発足

 当院におけるCOVID-19対応は、2020年2月、クルーズ船からの患者さん受け入れに始まります。直後、感染者数は爆発的に増加し、受け入れ患者数は瞬く間に規定病床数を超えましたが、尚も受け入れ続けざるを得ない事態にありました。感染症内科だけでは対応しきれず、一般病床をCOVID-19専用病床へ編成し、診療科や部署の垣根を払い、総力を挙げて対応にあたりました。これにより、当院の従来の組織体制や病院機能は崩れ、職員の生活や働き方も急変しました。その数ヵ月前には想像もしなかった職場環境の重大かつ急激な変化に、当時の院内はあたかも“災害”に見舞われたような状況でした。

 職員のメンタルヘルス支援については、受け入れ開始直後から課題に挙がっていました。私達心理師は、平時から職員相談や医療事故後の職員心理支援などにも携わっていることから、当初、その役割は心理師が担っていました。しかし、専用病床増加に伴い、配置転換や業務内容の変更など職員負担は増える一方で、「職員メンタルヘルス支援についても、特定職種に頼るのではなく、組織全体で取り組むべきではないか」との声が高まり、4月初頭、「COVID-19対応職員心理支援チーム(以下、チーム)」が発足し、組織的な職員メンタルヘルス支援が始まりました。現在は、精神科医師2名、認定看護師1名、心理師1名がチーム員として、本業と兼務しながら活動しています。

 

チームの活動内容とその変遷

はじめに/COVID-19対応職員心理支援チームの発足
チームの活動内容とその変遷
コロナ禍ゆえの職員メンタルヘルス支援の課題や難しさ/おわりに:職員メンタルヘルス支援とは何か

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