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こころの健康シリーズ\ 現代の災害とメンタルヘルス

No.4 災害におけるあいまいな喪失

武蔵野大学人間科学部 中島聡美


4.おわりに−支援者のあいまいな喪失

 本稿では、災害におけるあいまいな喪失とその対応について概括した。災害時の行方不明や原発事故を例にあげるとあいまいな喪失は非常に特殊な状況のように思われるが、実際には多くの人がどこかであいまいな喪失を経験している。支援者として、あいまいな喪を抱える人に、どうして接していいかとまどってしまうかもしれないが、実は私たちの中にあいまいな喪失に直面し、対処してきたり、また助けられた経験があるに違いない。自分自身の経験を振り返り、自分自身の資源を見出すことも支援に役立つことの1つである。

 Bossは支援者に対して、自分自身のあいまいな喪失に耐えられる限度が支援の限度になると述べており、あいまいさに忍耐力をつけることが重要だと述べている2)。例えば、家族や友人と地図を持たずに(カーナビをつけずに)ドライブにでかけ、わざと道に迷って、道にさまようことを楽しんでみることにチャレンジすることである。また、支援者は自分自身のもつあいまいな喪失に、ここであげた6つのガイドラインを使って振り返ることが必要である。その過程を通して、あいまいな喪失と折り合いをつけながら生きることをより実感できるからである。

 

参考文献

  1. Boss P: The context and process of theory development: The story of ambiguous loss. Journal of Family Theory & Review 8: 269-86, 2016.
  2. Boss P: Loss, trauma and resilience : Therapeutic work with ambiguous loss. New York: W.W. Norton and company, Inc., 2006.(ポーリン・ボス著,中島聡美・石井千賀子監訳:あいまいな喪失とトラウマからの回復.東京,誠信書房,2015.)
  3. Boss P: Ambiguous Loss - Learning to live with unresolved grief -. Cambridge: Harvard University Press, 1999.(ポーリン・ボス著,南山 浩二 翻訳:「さよなら」のない別れ 別れのない「さよなら」―あいまいな喪失.東京, 学文社,2005.)
  4. 警察庁 https://www.npa.go.jp/news/other/earthquake2011/pdf/higaijyoukyou.pdf.2023年2月10日閲覧)
  5. 黒川雅代子・石井千賀子・中島聡美・瀬藤乃理子: あいまいな喪失と家族のレジリエンス 災害支援の新しいアプローチ. 東京,誠信書房, 2019.
  6. 中島聡美・山下和彦:福島におけるあいまいな喪失.前田正治編著:福島原発事故がもたらしたもの −被災地のメンタルヘルスに何が起きているのか.東京,誠信書房,2018.
  7. Boss P, Beaulieu L, Wieling E, et al.: Healing loss, ambiguity, and trauma: a community-based intervention with families of union workers missing after the 9/11 attack in New York City. J Marital Fam Ther 29: 455-67, 2003

 

1.はじめに−あいまいな喪失とは?
2.災害とあいまいな喪失
3.あいまいな喪失を見る視点とそれを踏まえた支援
4.おわりに−支援者のあいまいな喪失

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