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こころの健康シリーズ\ 現代の災害とメンタルヘルス

No.11 向き合えない人々と心のケア 〜13年後に語れること〜

NPO法人相双に新しい精神科医療保健福祉システムをつくる会
相馬広域こころのケアセンターなごみ
米倉一磨


2.ストレスのはけ口がない行政職員

 初めて精神障害者アウトリーチ推進事業(震災対応型)が委託されたとき、私たちは、不慣れな事務作業や新規事業のため対応の遅さがあった。その時、厳しい口調で、委託元の職員から、「こんな事務作業もできないのか」「この作業は私がやらなければならないのか」「対象者全員を把握するのが当たり前ではないのか」と指摘を受けた。反論したい気持ちがあったが、そこに割くエネルギーを使うことは最善ではないと考え、ぐっとこらえるしかなかった。また、ある被災した市町村の保健師は、「心のケアチームのあなたは、何をやってくれるのか」と感情を込めた強い口調で言った。私は、「あなたは忙しくて疲弊し私に八つ当たりしている。それでも支援者か」と言いたかったが、この時は「つらかったんですね」としか言えなかった。この保健師は弱音を吐けず、弱いものへ八つ当たりするほど疲弊していたのであろう。

 しばらくして事業が軌道にのると、担当者と保健師の対応が180度変わっていった。今考えてみると、震災後、業務過多で不眠不休で仕事を続けてきた行政職員には、急遽できた法人に事業を委託するのは初めてのことであり、事務負担のある仕事だったのだろう。震災後、滞りなく事業ができればよいのだが、そうはいかずにそのストレスは、私に向いたのだと思う。震災では、弱い立場が傷つく不条理の連鎖はきっとどこにでもあるのだろうと思いつつも、それは、心のケアを行う支援者に怒りをぶつけ、ストレスを解消するしかできない弱さであり、不適切なSOSであるとも取れる。当時の私は未熟でしばらく消化できなかったが、今ならこの支援者の怒りを受け止め、適切な対処行動をとることができると思う。

 

3.二つの恐れ 

はじめに/1.支援者が支援者に翻弄される
2.ストレスのはけ口がない行政職員
3.二つの恐れ
4.支援者自身の心のケアと向き合えること/おわりに

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