聖路加国際病院理事長 日野原 重明 1.老人の心の健康 WHOは1951年に健康の定義として以下のWHO憲章前文を公表し、その後世界中の国々が、この定義を採択しているように思われます。 しかし、人間が中年から老人になる過程を調べて見ると、何らかの退行性変化やその他の新しく加わる疾患のために、WHOの憲章にあるような健康維持がされないのが普通であり、すべての人間はこのような健康状態から外れるということは誰もが認めるところであります。 以上のことから考えると、年齢が重なるとともに、身体的に疾患または欠損が加わり、心はそれに影響を受けて病み、また老いることも避けられぬことです。その心が病めば、身体はそのストレスの影響を受けてさらに病むことになるのです。つまり身体相関の理が具現されるのであって、その模型図を書けば以下のようになります。 そこで、健康とは何かについて、その言葉の発生過程をわかりやすく示してみたいと思います。 英語では健康のことをHealthと言いますが、その語源は16世紀以前のアングロ・サクソン時代の古語です。このは、Wellと言う意味ですが、これは癒し、全き、聖なるという三つの内容をもつものでした。それが次の如く 1.老人の心の健康 |
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