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No.3 老年期の抑うつと不安について

国立精神・神経センター国府台病院院長 樋口輝彦

4.老年期の「うつ病」は若い人の「うつ病」とどこが違うのか?

 この話に入る前に少し、うつ病はどうして起こるかについて述べてみます。残念ながら、うつ病の原因はまだわかっていません。ただ、およそ、このようなことが関係しているのであろうと思われることが挙げられています。まず、何らかのうつ病になりやすい素質があると考えられます。しかし、素質だけでうつ病が起こるわけではありません。これに状況(状況に基づくストレスと置き換えることもできます)要因と身体要因が加わってうつ病になると考えられます。

 さて、お年よりの場合にも上記の3つの要素、すなわち素質、状況因、身体因があてはまります。それぞれの要因が若い人の場合と異なると思われます。素質という点では、むしろ若い人の方が比重が大きいかも知れません。素質の強い人は人生の早期に病気になる可能性が高いと思われるのです。むしろ、老年期のうつ病では身体因や状況因の影響が大きくなります。慢性の身体疾患、そのための生活上の制約あるいは脳血管障害後遺症などが契機となってうつ病が始まることも多いのです。状況因も老年期に特有なものが多くあります。例えば、退職、配偶者の死、子どもの独立、同居、役割の喪失などなど。

5.老年期のうつ病の症状の特徴

1.誰でも「うつ」になることはある
2.「うつ」と「うつ病」は違う
3.「うつ病」の場合には早期治療が大切
4.老年期の「うつ病」は若い人の「うつ病」とどこが違うのか?
5.老年期のうつ病の症状の特徴
6.うつ病にならないために
7.老年期の不安への対処
8.不安に使う薬の話

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