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No.3 老年期の抑うつと不安について

国立精神・神経センター国府台病院院長 樋口輝彦

7.老年期の不安への対処

 老年期にはうつと並んで不安が問題になります。不安とひとことで言っても、中身はいろいろあります。さきほどまで述べたうつ病の位置症状でもありますので、不安が強い場合にその背後にうつ病はないかどうか確かめる必要もあるのです。不安は大きく現実不安と病的不安の二つに分けることができます。現実不安というのは実際に何らかの不安材料があるものです。将来の生活に関する不安、経済的な不安などです。一方、病的不安は具体的に材料があるわけではなく、漠然とした不安です。これは人間であれば誰でも持つ心理学的な不安と質においてはあまり変わりのないものですが、量的にその人の心を占拠してしまうと病的不安となるものです。お年寄りの場合には、往々にしてこのいずれかがわからない、ご本人にもわからない場合が多いように思います。また、両方の不安が混在している場合も少なくありません。そこで、対処の仕方としては、まずご自身で自分の不安がどのような性質のものかを整理していただくことが必要です。お一人で困難な場合は家族なり友人の助けを借りて下さい。そして、現実不安であれば、その具体的解決策を家族と共に見いだしていただくことになります(簡単に解決できない場合もあるとは思いますが、少なくとも手の打ち様を検討することが不安の解消につながります)。もし、現実不安でない場合には、その程度によって対処の仕方が変わります。不安のために日常生活に支障を来たしている場合には、専門家に相談することが必要になります。この場合には多くは他の症状、例えば睡眠障害、自律神経系の症状、身体症状などを伴っています。神経科、心療内科のクリニックなどに相談するのが適当です。治療は抗不安薬とカウンセリングが中心になります。日常生活に影響しない程度であれば、家族がゆっくり聞き手になってあげるだけでも不安は薄らぎます。また、できるだけ注意を他に向けることも有効ですので一緒に外出するなり、何かを一緒に作るなりするのが良いと思います。

8.不安に使う薬の話

1.誰でも「うつ」になることはある
2.「うつ」と「うつ病」は違う
3.「うつ病」の場合には早期治療が大切
4.老年期の「うつ病」は若い人の「うつ病」とどこが違うのか?
5.老年期のうつ病の症状の特徴
6.うつ病にならないために
7.老年期の不安への対処
8.不安に使う薬の話

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