(社)日本精神保健福祉連盟 常務理事大西 守 職場において「できること」「できないこと」を確認する職域で展開されるメンタルヘルス活動は、「職場」という枠組内で実施されるわけですから、職場では「できないこと」が存在します。いいかえれば、「できもしないこと」をやろうとすれば、職場では多くの混乱が生じます。 1つ目として強調したいのは、職場は病院でもリハビリテーション施設でもない点です。「リハビリ出勤」「試し出勤」と称して日本の職場ではリハビリ的なことを実施したがる傾向にありますが、リハビリテーション施設でもない職場で、リハビリの専門家でもない上長が面倒をみることでリハビリ機能がはたせるのでしょうか。その限界や危険性を認識する必要があります。 2つ目に強調したいのは、上長や産業保健スタッフは家族・家庭の代わりにはなり得ない点です。とはいえ、職場では上長・同僚が家族代わりのような世話をすることがよくあります。親身になって世話をしても、家族にしかできない支援や責任がある現実を忘れてはいけません。すなわち、事例を抱え込んで問題を長期化させたり、職場が過度の管理責任を負うことは誰にとっても不幸な事態です。 3つ目として強調したいのは、時間は無限ではないことです。職場のメンタルヘルス活動が業務活動の一環である以上、一定期間内にその結果と評価がなされるのは当然ですが、漫然と同一手法での対応を繰り返している事例が散見されるのは遺憾です。少なくとも、産業保健スタッフは費用対効果と時間対効果をきちんと意識すべきでしょう。 4つ目として強調したいのは、残念なことですが精神疾患の一部は十分に回復せず障害が残る現実です。ところが、メンタルな病気は治療してリハビリテーションに励めば原則10割回復できることが大前提になっている職場がほとんどです。しかし、実際にはどんなに頑張っても5割・6割しか回復が望めない事例が少なからず存在します。したがって、リストラが進み余裕のなくなった職場において、障害が残り戦力になり得ない事例への対応を職場全体で考えていく必要があります。 職場でのメンタルヘルス活動の現状は |
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